訳あり冷徹社長はただの優男でした
午後から仕事に戻るも、頭の中はさっきの牧内さんの言葉がずっと回っていてまったく集中できないでいた。

柴原さんに相談しようか。
そう思って携帯に電話をかけてみるも、忙しいのか留守番電話に繋がってしまった。

会社にかける?
いやいや、ない、それはないわ。
会社にかけたらきっとあの美人の受付嬢が出て、更に美人の秘書の安達さんに繋がれるに決まってる。

ていうか、あの人たちは柴原さんの好みなんだろうか。姉も美人タイプだし、柴原さんは美人好きに違いない。くそ、あの面食いめ。

姉だけではなく、完全にとばっちりではあるけれど柴原さんに対しても怒りがどんどん沸き上がり、仕事どころではなくなった私はここぞとばかりに申請が下りた育児時短勤務を利用して
15時で退社して病院に向かった。
本来の育児時短勤務の使い方とはまったく異なるけれど、そんなことを言っている場合ではない。
とにかく文句を言わないと気がすまなかった。

言いたいことはたくさんある。

私がこの半年、どれだけ苦労したと思っているんだ。キャリアウーマンの道も捨ててすずに費やしている、この時間を返してほしい。

私はもっとバリバリと仕事をしたかった。社会人として綺麗にメイクもしてビシッとスーツも着て、ピンヒールの靴で颯爽と仕事をする。そう、柴原さんの秘書の安達さんみたいな、そんな絵に描いたようなキャリアウーマンになりたかった。

それなのに今はもう、正反対だ。
メイクも簡素なものだし、服も靴もすずに合わせて動きやすいものを選んでいる。

何で私がこんな目に。
何で私が…。
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