訳あり冷徹社長はただの優男でした
私の声が病室に響く。
大部屋だということを思い出して、私はそのまま唇を噛みしめた。

「ここ、座りなよ。」

姉に促されて、私は渋々とベッド脇の椅子に座った。
姉の近くに来たことで、両腕に点滴の跡や痣が無数にあることに気づく。そして浮き出た骨。
私は思わず顔をしかめた。
そんな様子に気付いてか、姉は小さく笑う。

「もうね長くないの。余命宣告もされてる。調子が悪いときは起きているのもつらいくらい。日に日に弱っていくのがわかるわ。」

「…お姉ちゃん。」

「勝手なことをしてるっていうのはわかってる。でも、すずのことよろしくお願いします。私ではもう育てられない。」

そう言って、姉は頭を下げた。
その姿は弱々しすぎて、私は胸がぎゅっとなる。今すぐにでも死んでしまうのではないだろうかと感じさせるほど、弱くて儚い。

「何弱気なこと言ってるのよ。あんなにいつも図々しい態度でうちに来てたくせに。ふざけないでよ。」

私は自分が感じ取ってしまった空気を払拭するように、姉に罵声を浴びせた。
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