ごめん。ぜんぶ、恋だった。
学校はいつものように三人で登校した。昇降口で仁菜と別れ、自分の下駄箱を開けると、ばらばらと手紙が落ちてきた。
きちんと名前が書かれているものもあれば、ルーズリーフを小さく折っただけの名無しの紙も混ざっている。
「捨てたりしたらダメだからね」
隣で靴を履き替えている志乃に言われた。
「じゃ、大事に飾っとけってか」
ラブレターという名の好意の押し付けは今に始まったことじゃない。
好きだの、友達になってくださいだの、読まなくても手紙の内容は大体同じ。
志乃いわく、俺は近寄るなオーラが半端ないようで、みんな直接言えないぶん手紙に書いてるんだよと言っていた。
「飾らなくてもいいから取っておきなよ。捨てたりしたらバチが当たるからね」
志乃はこういう時には俺の味方をしてくれない。
顔を赤らめて俺のことを見ている女子に冷たい視線をすると決まって頭を叩かれて「片想いなめるな」って怒る。
べつになめてるわけじゃないけど、こんな俺のどこがいいんだろうと思う。
クールな王子様なんて勝手に呼ばれているらしいけれど、ただ単に愛想がないだけだ。少女漫画みたいに妄想されても応えられない。