ごめん。ぜんぶ、恋だった。
――『私は速水くんと付き合ってるんだから、勘違いしないで!』
その言葉は、岩で頭を殴られるくらいの衝撃だった。おかげで伝えようとしていたことは、あっさりと喉の奥のほうに引っ込んでしまった。
「んで、失恋したみたいな顔してるけど、どうしたわけ?」
案外鋭い倉木はカップラーメンにお湯を入れたあと、スマホのタイマーを使って、きっちりと3分を計っていた。
「なにも言わないってことは図星?っていうか橋本って好きなやついたんだ」
「いないなんて言ってない」
「そうだけどさー。俺はやっぱりなんだかんだ言いながら境井と落ち着くんだと思ってたから」
ブーとバイブ音が鳴ると、倉木は醤油味の麺を気持ちがいいくらい啜りはじめた。
志乃と落ち着くって、なんなんだろう。
じゃあ、逆に俺と仁菜が交わることは、そんなに遠いことなんだろうか。
誰も想像すらしていない。
俺だって、想像できない。