ティアドロップ(短編)
2 箱庭の恋



十年前のこと。


送別会には、たくさんの人が集まっていた。

シアトルにあるコンサルティング企業に就職する西園寺さんの送別会は、出国のスケジュールが急だったこともあり、渡米の前夜に開かれた。それなのに普段と同じようにお酒を飲んでいる西園寺さんは豪気だと思う。



西園寺さんはずっと声をかけられていて、私なんかが話しかける隙もない。プレゼントを用意してきたけれど、この人数では手渡すこともできなさそうだ。どうせ邪魔になってしまうだろうし諦めて持って帰ることにする。


居酒屋の片隅で、仲の良い美月と話し込んでいるうちにお酒がぐんぐん進んでいた。


「やっぱりだめんずだったか。時乃はほんっとに男運ないよね」


「だめって…言わないで。ホントは優しいんだよ」


「いやー明らかに駄目男だって。そんな奴を優しいとか言ってるから、時乃は地雷男ばっかり寄せ付けるんでしょーが!」


じとっとした目つきの美月にお説教される。彼女はサバサバした性格の美人である。地味な私とは何かと対称的で頼りがいのある友達だ。

感情的になると頭を抱えるのが癖で、話しているうちに綺麗にアップされたヘアスタイルの後れ毛が増えていく。


美月の言うように、これまで私は男の人と上手くいったことがなかった。声をかけてくれる人がいても、私がアニメのキャラクターの生まれ変わりと信じているような変な人ばかり。


それでもやっと大好きな人と付き合えたと思ったのに、昨日振られてしまったのだ。


「お前ら、隅っこでガチ恋愛トークなんかしやがって。俺を送る気なんかさらさらないだろ」


「あ…!」


予想外に西園寺さんがこちらに来ていた。美月がぱっと顔をあげて、西園寺さんに挨拶する。



「あ、西園寺さーん。主賓は忙しいかなーと思って遠慮してたんですよ。

でもちゃんと西園寺さんのこと考えてセクシー系ワンピ着てきましたよ?可愛いでしょ」


「あー可愛い可愛い。その押し付けがましいところがなければな」


「えー?こういうの好きなくせに」


美月と西園寺さんの会話が弾んでいる。いつもさらっと言葉が出てくる美月はすごい。お互い憎まれ口を叩いてるけど、二人とも楽しそうだ。


「で、こいつは?珍しく酔っ払ってんじゃん。」
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