お嬢様と呼ばないで
「おいおい。あのさ、入学案内のメール見ろよ」
こんな冷たい疾風に、丈一郎は優しくしろ!と肩を叩いた。
「はいはい。なあ、美友、一緒に行こうか?」
『……ううん。美友は一人で平気よ?疾風君だって、一緒に行きたい人がいるでしょう?その人と行ってあげて』
「健気だな……」
「ああ。俺が一緒に行ってあげたいぜ」
こんな日永と丈一郎の言葉を聞いた疾風は後で一緒に行こうと約束して電話を切った。
「しょうがねえ。あいつが1人で行くのを背後から見て行くか」
「お前さ。ストーカーにならないようにしろよ」
「ああ。話だけだとお前は犯罪者だ。俺は担任だが!とても庇えないぞ」
「それで俺の担任かよ?ひでえな?」
しかし美友の肉声を聞いた丈一郎と日永はどこか満足そうだった。
「さ。帰るか?明日は入学式だし」
「そうだな。丈一郎は駅で降ろしてやるから」
こうして解散した三人だったが、疾風は一人マンションに帰ってきた。
高層の部屋からは向かいの広い敷地の日本家屋が見えていた。
……美友と同じ高校か。
その時、スマホからメッセージの着信音がした。
「なんだ?美友か」
そこには『緊張で眠れない』と合った。