雨の日が大好きな君
出会い
「あなたも?」
突然、まだ生気を感じられなくもない、高くて甘い声がした。
「あなたも?って…何が?」僕は彼女にきいた。
「あなたも、死のうと思ってここに来たんでしょ?」「いや、まぁ…」
全て答えないうちに、彼女の言葉がきこえてきた。「やっぱり!知ってた?ここ、よく飛び込む人がいるんだって!もしここで死んだら、今日か明日にはニュースになって、そのうちどっかのテレビ局がきて、《自殺者多数!恐怖の心霊ホーム!》って感じで取材にくるのかな?そしたら絶対テレビにでるんだから!ね!」
死ぬ前にしては明るすぎるくらいの笑顔を僕にむけて放つ。(ね!って、今から死のうと思ってるやつがこんな明るいかよ…)
「あのさ、一つきいていい…?」
「ん?なになに!?」
「なんで君はここにきたの?」
「え…?なんでって…最初に、あなたも?っていったでしょ?だから、あなたと一緒!死のうと思って来たのよ!」
「いや、そういう意味じゃなくて…それに、俺は死のうと思って来たんじゃない。」
彼女は言った。
「じゃあ、なんでここにきたの?」
少し考えた。
「なんか、何も考えずに歩いてたら、きちゃったんだ。」
「ふーん。変なのー。あ!あのさ、どうせなら今から付き合ってくれない?!」僕はあきれて、気怠い感じで言った。
「おい…今ここで死のうと思ってたやつが俺をデートに誘うのかよ?」
彼女は僕に軽くビンタして言った。「いいじゃない!あんたが来たら死ぬ気なくしちゃった!いい?これは罰だからね?わかってる?!」
彼女からのビンタは全然痛くなかったが、何か重たさを感じて一瞬戸惑ってしまった。
「ねぇ!きいてる!?」
「あ、あぁ!ごめんごめん!わかった。お気の召すままに。自殺しようとしてたお嬢様。」君は雨の中びしょ濡れになりながら、歩き出した。「…名前聞いてないよね?俺もいってないし。俺の名前は浜田大介。お嬢様は?」
彼女は振り向き、これをみたら落ちない男はいない、と思わせるくらいの笑顔を向けて僕に言った。「私はキャサリン!」
「は?」
「う~そ!野水小雪!!わすれないでよ!」
「わすれるわけないだろう?こんな出会い方したら。」
「それもそうね。そんな事より、はやく!おそいぞ!」
僕は小走りで小雪の隣りに肩を並べた。
この時はまだ本当の自分も分からなかった。
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