平然と嘘

純也さんが入所してきて
一週間が経過した。
日に日に、弱って行くように感じる。

私達は、患者と看護師の立場を通し
純也さんも何も語らないし
私も何も訊ねない。

でも、純也さんが話せる時に
話をしなければ、と思っていた。

あれから、お義母さんは、
ずっと、私に寄り添ってくれて
我が子である、純也さんとは
一切連絡を取っていなかった。
それが、私には申し訳なくて
お義母さんも今、あまり
体調が良くない。

知らせて良いか
純也さんに聞かなければと
思っているが・・・・・

今日は、ホスピスの先生の診察日なので
純也さんを車椅子に乗せて
診察室に向かう。

診察を終えて病室に戻る時に
「看護師さん、少し外の空気が吸いたい
のですが。」
と、言うから
スタッフに連絡して
「少し寄り道をして戻ります。」
と、伝えて外にでた。

純也さんは、気持ち良さそうな
顔をしていた。
私は、車椅子の横に座り
「大丈夫ですか?」
と、声をかけた。

すると・・・・

「澪、すまなかった。
どれだけ悔やんでも
どれだけ後悔しても
許されない事をした。

〝因果応報”って
本当にあるんだな。」
と、言うから
私は、首を横にふりながら
「一人で、大変でしたね。
つらかったでしょう。」
と、言うと
純也さんの目から涙が流れた。

それを、私は拭きながら
お義母さんの体調が良くないこと
大和が結婚して、お義母さんの家の
近くに住んでいることを話した。

純也さん、うんうんと
嬉しそうにしたり、
お義母さんを心配しながら
聞いてくれた。

お義母さんに知らせても?
と、訊ねたが
うん、とも
ううん、とも言わなかった。
いや、言えなかったんだろう。

「看護師さん、部屋に戻ります。」
と、言うから
二人で病室に戻り
介護担当と二人で
純也さんをベッドに寝せた。

すると、疲れたのか
純也さんは、すぐに眠りについた。

私は、その夜
お義母さんと大和夫婦に合いに
向かった。
< 30 / 38 >

この作品をシェア

pagetop