平然と嘘

『笹川 澪 様』
と、書かれている封筒を見つけた。

躊躇いながら、開けて読むと

『澪へ

澪が、これを読んでいると
言う事は、俺はもう澪の側に
いないんだな。

澪と少しの間でも一緒に過ごせて
嬉しかった。

こんな俺にも神様が
少しだけお情けをくれたんだと
思ったんだ。

ずっと、ずっと、澪の事を
考えていたから。

俺は、どうして
あんな事をしたんだろう
あんなに、澪を愛して
澪との生活は安らぎで
寛げる空間の家庭だったのに。

たった一人の息子である
大和の結婚も祝ってやれない
なんて・・・・・。
バカ過ぎて、泣けもしない。

こんな俺だけど
澪の幸せを
大和の幸せを祈ってる

そして、お袋が一日も長く
二人の側にいることを
祈っている。

それだけは、許してくれな。

澪、本当に
    ありがとう。

         荒川 純也 』



読みながら、何度も
純也さんの字が読めなくなり
タオルで拭きながら
一生懸命読んだ。

純也さんが、あの体で
必死に書いてくれたと
思うから。


それに、お寺への永代供養費を
現金で置いてあった。

私が付き合いはじめに
プレゼントしたバッグの中に。
年期の入ったバッグに
こんな大金が入っているとは
誰も思わないだろう。


バッグ・・・・・
大事にしてくれて・・・いたんだ・・・

   本当に・・・あなたは・・・・。


   お陰で、あなたを

   この先も・・・・・・

   忘れられない・・・・よ・・・

   ずっと・・・・・。。。。。

                完
< 36 / 38 >

この作品をシェア

pagetop