舞姫-遠い記憶が踊る影-

「タキの演奏も楽しみにしてるよ」
「ほんと!年始の時の演奏、素晴らしかったわ!」
「全くだ。カレンの踊りにも負けない」
「あぁ、マリエおばさんのお目当てがわかったよ」

あまりの感激のしようにアタシはくすくすと笑いが溢れた。
当のタキは照れてペコリと会釈するくらいだ。
その様子に、みんなでまた笑う。

「それじゃあ、夜に」

和やかな時間のあとで別れ、本来の目的である買い出しのために歩きだした。

サガイおじさんとマリエおばさんの寄り添う姿は恋人のようにも見えるが、その落ち着きようにはやはり苦労を共にしてきた長い年月もしっかりと窺える。
子供がいたら、なんて話をサガイおじさんはたまにするが、それはマリエおばさんを責めるでもなく自分を責めるでもなく、そんな未来があったらなという若い頃に持った希望の一つ。
夫婦二人でたくさん悩んだこともあっただろうがそれを受け入れ、羨むことはあっても僻むことなく事実を受け入れ二人で仲睦まじく過ごしている。
小さな頃からアタシを見ていてくれていたこともあって、本当の子供のように接してくれているしタキに対しても同じく我が子のように思ってくれていることが分かる。
先程の会話に自然と頬が緩んでいた。

< 33 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop