オモイドオリ


「……先生、前澤先生!」

生徒の声で我に返る。

「もー、さっきからずっと呼んでるのにー。」

目の前には、さっき授業をしたクラスの女子生徒がほっぺたを膨らませて立っていた。

「あぁ、ちょっと考え事をしていて。すまない。」

「あはは、しっかりしてよ~。それで、分かんない問題があるんだけどね……」

わざわざ放課後まで質問しに来るなんて、勉強熱心な子だな。

まるで、アイツみたいだ……なんて。

……せめて、生徒の前ではあのことを思い出さないようにしないと。

俺はいつになったら解放されるんだ……。

いつまで苦しめば……違う。

苦しかったのは、俺じゃない。

アイツだ。

アイツの方が、よほど苦しかったに決まっている。

「……先生……? 顔色悪いけど……大丈夫?」

「……大、丈夫だ。」

まただ。

またやってしまった。

一日のうちに何回も思い出して、囚われてしまって。

どうしても抜け出せないんだ。

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