私立秀麗華美学園
「よかった」


ゆうかはそっと呟いた。心底安心した表情で、咲と雄吾を見る。幸せそうなのが2人だと、こっちの喜びも2倍だ。
そしてゆうかは、離れたところで、言葉もない様子をして立ち尽くしている水沢に近づいて行った。


「水沢さん」


水沢はびくりと体を震わせて、ゆうかの方を向いた。


「見ての通り、って感じかしら。申し訳ございません。依頼を受理するわけには参りません。あなたが雄吾のことを好きなのは、何も悪いことじゃないけれど、言っておくと、2人の仲を引き裂こうなんてことは、思わない方が身のためよ」

「……思わないわよ。そんなこと。私、見かけほど性格は悪くないつもりだから。いいのよ、私は勝手に雄吾様のことを好きでいるわ! 私には騎士もいないことだし。その代わり、そっちだって邪魔はしないでよね!」


ゆうかが小さく微笑んで返事をすると、水沢は威厳を保ったまま、つかつかと大人しく帰って行った。
引き際を弁えた、潔い後ろ姿だった。
まあ、あの2人の様子を見れば、誰だってそうしないわけにはいかないだろう。


「……で、どうする? このまま帰っちゃおうか」

「そうだな。しばらくはあのままでいそうだしな」

「そうね。特に咲なんか、離れてた時間の分取り戻すみたいに、きっと引きはがそうとしても無理でしょうね」


俺たちは顔を見合わせて笑った。
そしてそのまま校舎の方へ足を向け、咲と雄吾をおいて教室へ帰る。


「なんか、さすが雄吾って感じだったな」

「何が?」

「素直に、自己中になって言った言葉。かっこよかったなーと思って」

「……和人だって、結構すごい台詞、薔薇園で言ってくれちゃってたけどね」


思い出して赤面する俺に向かって、ゆうかはあごをひいて微笑んだ。



















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