私立秀麗華美学園
「それなら、私の気持ちを一番わかってるのは一体誰なんだろうって思うの」

「へえ……」

「別に、和人にそうなって欲しいってわけじゃないの。今の和人を私は受け入れてるつもりでいるし」


咲はベッドの上に広がる、ゆうかの長い髪を見た。
水の流れのように自然な曲線を描いた髪は、ゆうかが体を動かすとそれに同調してうねり、金糸のように滑り落ちる。


――そら、もしゆうかに拒絶されたりしたら、和人は生きていかれへんもんな。


うろたえる和人を想像するとおかしくて、咲は声を漏らして笑った。


「……何」

「別に。ちょっと」


ごまかすように、咲はカップを口に運んだ。


「咲らしくない」


ゆうかはそう言いつつ寝返り、微笑みを浮かべたまま咲に背を向けた。


「和人のこと、嫌いじゃないのよ……」

「うん」

「笠井のことは、自分では、好きなひとだと認識してる。けど、結婚したいのかって言われたら、それもまた違う」

「うん」


結局はっきりとした答えは見つけられないままだったが、咲にはそれで十分だった。
同じ境遇の者同士、分かり合うことはそう難しくもない。


咲は空気が少し冷えたのを感じ、くしゃみをして立ち上がった。


「風邪引かないようにしなさいよ……」


ゆうかはまどろみつつ呟いていた。


「わかってるよ」


咲は微笑みながら、空になった2つのカップを流し台へ運んでいった。















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