私立秀麗華美学園
変化はもうひとつ。ゆうかとの関係がヨハンと出会う以前に戻り、その上距離が少し、縮んだ気がする。

雄吾に言わせれば、


「縮んだ分は、お前がゆうかにつきまとうことで埋めようとしていた距離だ」


ということらしい。


「大げさに言えば精神的な依存だな。それがあれ以来、そうでもなくなってきていると思う」

「ゆうか至上主義的な」

「ああ……でもそう思えば、あの雨の日からそれは始まっていたな」


雨……フロランタンの時か。

ゆうかのことばかり考えるのを少しやめてみた。


「よかった」


向かう方角は間違っていなかったのかな、と安心する。


「最近他の人間と一緒にいるところを見ることが増えた」

「進とかな」

「ああ、そうだな」


にやりと笑って雄吾はシャーペンを机に置いた。


「勉強も教えてもらえばどうだ。ゆうかや俺も安心する」

「……それはさすがにちょっと……」


雄吾のノートを見ながら真似して数学を解いていた手を止め、その様を想像する。

……無理だ。プライドとかそういうあれもなくはないけど、進はきっと人にものを教えるのがものすごく下手だ。
それにたぶん、言い合いになって手の方が進まないだろう。


雄吾は眼鏡を置いて立ち上がった。
けほ、と軽く咳をする。


「思いつきで言ったまでだ。……悪いが、今日はもう寝る」

「体調悪いのか? 俺も寝よーかなー」

「お前は一通りやってからだ」


ぴしりと言われるが雄吾には反抗する気にならない。これが進だったらと思うと、うん、やっぱり無理だ。勉強は無理だ。


「おやすみ」


雄吾がベッドにもぐったので自分の机に移動し、部屋の明かりの光度を下げた。






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