私立秀麗華美学園
次の日、俺たちは1月後の学祭に向け、準備を始めていた。


「無難にフランクフルト!」

「おでんが食べたい!」

「いっそデパ地下!」

「キャビアのつかみ取り!」


初夏の候に相応しくない意見や、いくらこの学園でも実現不可能なものもちらほら聞こえるが、案を出し合い、出店の内容を考えている最中だ。


「どうしよう。なかなか、まとまらないわ」


副委員長のゆうかは教壇に立ち、小さな頭を悩ませフル稼働していた。
例の委員長はというと公演という選択肢を潰されたことがよほど悔しいらしく、さきほどから一言も発していない。
ひじをついてあごを乗せ、明らかにどーでもいいよ的なムードを漂わせている。


「ねえ、笠井君、どうしたのかなあ」

「お悩みでもあるのかしらあ」


そんな姿ですら、その他大勢の女子の目には母性本能をくすぐるように見えるらしい。
おいこらてめえら。どーせ顔周辺しか見てねえだろ。お前らの騎士が泣くぞ。


「ねえ委員長、どうするの? ……その前に、どうしたの?」


もちろんゆうかには、やつのヘコんでいる理由はわかりきっている。しかし気づかないふりをするのも優しさなのだろう。
なぜゆうかは俺以外の人間にはあれほどまでに気を回せるのだろうか。


「べっつにー……」


ゆうかに対してすらその態度かよ、お前。

ゆうかは苦笑いをしてこちらを向いた。しかし俺になす術はない。笠井を余計に挑発するようなことであればできなくもないが。


結局どういった成り行きからかはわからないが、A組はキャラメルの早食い大会を執り行うことになった。もとい、なってしまった。
様々な権力やらなんやらで、粘着力が高く食べ辛いキャラメルを合成するらしい。

何がしたいのかさっぱりわからないが、高校生ってそんなもんだろ。
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