弥生花音 童話集 1
ある日のうさぎちゃん
きっとあなたのちかくにあるかもしれない、小さな、小さな森に、一匹のうさぎちゃんが住んでいました。

うさぎちゃんのお父さんとお母さんは、1ねんまえに病気で死んでしまい、うさぎちゃんはひとりぼっちでした。

それでもうさぎちゃんは、あかるくいっしょうけんめいに生きていました。

ある朝、いつものように早起きしたうさぎちゃんは、にわとりさんのおうちへ行きました。

「にわとりのおかあさん、おとうさん、ひよこちゃんたち、おはよう。今日もオムレツを作るのにつかうたまごをふたつ、くれないかしら。」

「いいわよ。さあどうぞ。そのかわり、むすめたちとちょっとあそんでやってくれないかしら」

にわとりのおかあさんはいいました。

「なわとびをもってきたの。ひよこちゃんたち、いっしょにとびましょう」

いち、に、さん、し、みんなはほんとうに楽しそうにとびます。

「ありがとう。さあ、これ。」

「ひよこちゃんたち、朝ごはんのあともあそべるかしら」

「ごめんね、きょうは、いそがしいの」

「そう・・・。」

うさぎちゃんはざんねんそうです。

「ゆりちゃんと、うしさんと、くまさんのところにもいくんでしょう?3人にこのふうとうをわたしてくれない?」

「わかったわ。たまごをありがとう」

バスケットに2つのたまごと3通のふうとうをいれると、小さなこやの戸をノックしました。「おじさん、おばさん、ゆりちゃん、おはよう。キュウリとレタスとトマトをいただいてもいいですか」

「おはよう、うさぎちゃん。もちろん、いいよ。ゆりはまだねているけど」

「ゆりちゃんは、きょうも学校ですか。あ、これ、めんどりさんからゆりちゃんにです」

「ゆりは、今日は3時にはかえってくるからあそびにおいで。お手紙をありがとう」

「どういたしまして」

キュウリと、レタスと、トマトをもぐと、バスケットにいれました。つぎは、うしさんのおうちです。

「おはよう、うしのおとうさん、おかあさん、こうしさんたち、おはよう。うしのおかあさん、ミルクを少しもらってもいいかしら」

「いいわよ。」

うさぎちゃんは、おちちをしぼって、ミルクをもらうと、めんどりさんにもらったふうとうを渡しました。

「こうしちゃんたちと朝ごはんのあと、あそべる?」

「ごめんね、きょうはダメなの」

うさぎちゃんは、ほんとにざんねんです。

気をとりなおして、こんどは、くまさんのあなぐらに行きました。

「おはよう、くまのおかあさん、おとうさん、こぐまちゃんたち。パンにぬるはちみつをすこしわけてくれないかしら」

「いいわよ、もちろん」

「それと、これ」

めんどりさんからわたされたふうとうをわたしました。

「くまちゃんたち、朝ごはんのあとにあそべる?」

「ごめん、きょうはつごうがわるいんだ」

「そう・・・」

うさぎちゃんは、とても悲しくて、泣きたくなってしまいました。

(わたしは、ひとりぼっちだわ。パパもママもいない、ともだちもあそんでくれない。なんでなの。)

とてもさびしいきもちで、朝ごはんを食べて、ベッドにつっぷしてしまいました。

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「ピンポーン」

チャイムのおとでうさぎちゃんは、目がさめました。

時計は3時をすこしすぎたところでした。

ドアを開けると、ゆりちゃんがニコニコして言いました。

「すぐにうちへおいで」

うさぎちゃんは、わくわくしながら、ゆりちゃんと手をつないでいきました。

「うさぎちゃん、ドアを開けて」

ぱん、ぱん、ぱん!!クラッカーの音がなります。

「うさぎちゃん、4さいのおたんじょうびおめでとう!!」

にわとりのおかあさん、おとうさん、ひよこちゃんたち、

うしのおかあさん、おとうさん、こうしちゃんたち、

くまのおかあさん、おとうさん、こぐまちゃんたち、

それにゆりちゃんのおとうさんとおかあさんがニコニコ笑っています。

たくさんのごちそうや、おいしそうなケーキもあります。

キラキラにかざられた部屋は、おとぎの国のようです。

「ありがとう、ありがとう!!」

うさぎちゃんは、嬉しくて涙がこぼれました。

(おとうさん、おかあさん、わたしはけっしてひとりじゃないよ。たくさんのともだちとたのしくくらしていくよ。わたしを産んでくれてありがとう。)

うさぎちゃんの楽しいたんじょうびパーティは、夜遅くまでつづきました。

うさぎちゃんの忘れられない1日になりました。


おしまい。
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