。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。


ウッドデッキのテラスに出ると、目の前の海の上を撫でた風が、ふわりと肌を掠めていって、その爽やかな風がちょっと気持ち良かった。


潮の香りが漂ってくる。その風に混ざって、ほんの少し……タバコの匂い…


先輩はテラスの手すりに両腕を乗せて缶ビールと…タバコを吸っていた。


あたしの姿に気づくと


「り、リコちゃん!」と慌ててタバコを消す素振り。


「いいですよ、そのままで」とあたしは苦笑をして「今更だし」と付け加えた。


「そっか…そうだよな!」


と先輩は二三大きく頷き、


「先輩の分のデザート持ってきました」とエクレアを翳すと


「サンキュ~♪」と先輩は笑う。


「みんなと居なくていいんですか?あ、それともタバコ吸いたかったから??」


でも、リビングで龍崎くんも吸ってたような……てことは禁煙じゃないってことだよね。


「いや……ちょっと一人になりたかったから」と先輩は口ごもり


「すみませ……あたし空気読めずに…」慌てて踵を返そうとすると、手首をきゅっと握られた。


「いい!ここに……居て?」


「……はい」小さく頷き、あたしも先輩と同じように手摺に両腕を乗せた。


「風、気持ちいいですね」


「うん、思ったより良かったな、親父の別荘」


「来たことないんですか?」


「小さい頃来たけど、あんま記憶になくてさー」


あはは、と先輩は苦笑い。


その声がどこか空元気を思わせて、先輩の声は風がさらっていったかのように小さく聞こえた。


何を……考えてるのだろう…


知りたいけど、知りたくない―――



< 254 / 413 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop