。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。

戒のふわふわの髪を撫でると、あたしの髪も同じ様に戒が撫で梳く。


ふと首元から戒の顏が離れ、至近距離で見つめ合いながら



「ほんまに



好き」



戒は微笑みながらそっとあたしの頭を抱き寄せた。


部屋の壁にあたしたちの影が二人分の形を浮かべていて、それはくっついていたけれど、あたしには何だかとても遠い気がした。


影―――…


と思ったところで、ふとレースのカーテンが掛かった出窓の外を見た。


まぁるい月がまるで深い藍色のベルベッド生地を敷き詰めた夜空の中、異様な程輝いている。


満月……?


と思ってると


遠くの方で、何かの遠吠えのような声が聞こえた。


犬……?


いや、あれは―――









「戒……何か聞こえなかった…?」


野生の狼がこの辺に生息しているとは思えなかったが、もしいたのならちょっと怖い。


人間相手なら倒せるが、動物はどんな動きを取るのか全く見えないから。


「何か?」


戒は目をまばたく。


戒には聞こえてない―――…てこと?


と言うことはあたしの空耳ってことか。


満月のとき、狼人間が狼になるって言う物語があったからそれを思い出して、狼の声だと勘違いしたに違いない。


単に目の前に広がった海の波の音が聞こえただけかもしれないし。


でも…


まるで誰かがあたしを呼んでるように、


聞こえた―――



あたしは窓の外を眺めた。


すぐ近くにある海の波がザザっと大きな音を立てて漣を立てる。





「風が強い―――



嵐がくる予感」






その嵐はとてつもなくデカい……


やがてあたしたちを巻きこんで、壊していくような―――



そんな気がしてならない。


「戒……何だかあたし……怖いよ」


何に対して怯えているのかあたし自身分からなかったけれど、あたしをいつも守ってくれた大きくて温かい手をきゅっと握ると


「大丈夫や。俺はお前に怖い思いさせへん。


俺は何があろうとお前を



守ってみせる」


だから安心しろ



戒は最後にそう呟いて、あたしの頭をぽんぽんと撫で、戒の言葉でわけのわからない恐怖がゆっくりと凪いでいった気がした。



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