。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。



青龍と白虎の盃の話が持ち上がり、虎間がこちらに来たときから、まるで勢力の弱い台風が徐々に近づいてくる気がした。


イチがこっちに来たのもその頃だ。


そしてスネークが動き出したのも。


それまでは小さな諍いはあったものの、割と平穏(?)ではあった。そもそも勢力を増した朱雀と玄武を制圧するために結ばれた協定だが、そうすることで起こさなくてもいい何かを起こしてしまった気がする。


そしてその“何か”はまるで大型台風のように徐々に勢力を増している。もはや朱雀や玄武の力のレベルではない気がする。


もっと大きく計り知れない“何か”がやってくる―――


そう感じた。


寒くはないのに、冷たい何かが背中を伝う。


湯呑茶碗を持つ手に力が籠った。


その時だった。


一瞬だけ視界が黒く染め上げられ、びっくりして、まばたきをすると衛が俺の額に手を当てていた。


驚いた。眠ってもいないのに、こんな風に予告もなく黒色に染め上げられたことに。


「何をする」と睨んでその手を払いのけると


「いえ、顔色が悪く見えたので」と衛は他意のない様子。


「大丈夫だ」そっけなく言うと


「あらホント。サバにあたった?」とキリも目をパチパチ。


「んなワケあるか。単なる……」


言いかけて、次に続く言葉が思いつかなかった。


単なる何なんだ。





嫌な予感―――





一番しっくりくる言葉だが、そんな言葉俺らしくない。


「単なるいつもの貧血だ」


と、そっけなく言い俺は再び箸を動かせた。


今度こそ衛もキリも何も言ってこなかった。


だが、嫌な予感と言うのはこの時点ですでに俺の想像をはるかに超していて


それを実感するときは、手遅れになる―――



と言うことをこのときの俺は


まだ知らなかった。






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