婚約破棄された日に結婚しました【受賞作品】
 今日は金曜日。俊との久しぶりのデート。

私たちは、同棲を始めてから、家でまったりすることが多くて、外食もあまりしてこなかった。

それなのに、今日の午後、俊から突然、メールが来たんだ。

〔駅前のピアノバーで待ってる〕

いつもの用件のみのあっさりしたメール。

私もいつも通り〔了解〕と書かれたかわいい猫のスタンプを送る。


 私はピアノバーに向かいながら、疑問に思う。

それにしても、なんだろう、突然。
もしかして、プロポーズとか?

キャー‼︎
そしたら、この本のピンクの婚姻届を使おう‼︎


私はうきうきしながら、ピアノバーの重い扉を開けた。

俊はまだ来てないのかな?

店内をキョロキョロと見回していると店員に声を掛けられた。

私は、待ち合わせであることを告げ、店員の案内で奥まった席に着いた。

ピアノの優しい音色を聴きながら俊を待つ。
15分ほど待ったところで、ようやく俊が姿を見せた。

「悪い、遅れた」

そう言って、向かいの席に腰を下ろした俊を見て、私は2人分のオーダーをする。

「今日はどうしたの?」

「うん、まぁ、飲みながら話すよ」

そう言う俊の言葉は、なんだか歯切れが悪い。

気にはなるものの、頑固な俊は無理に聞き出そうとすれば、余計に喋らなくなるに違いない。

私は、俊が自分から話してくれるのを待つことにした。
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