恋人は社長令嬢
「赤間さん……」

「は、はい?」

「優しい……」

瞬は、梨々香の大きな瞳から顔を反らすと、ゴホンと咳をした。

「そんなに、家に帰りたくなかったの?」

「え?」

「ホテルに泊るくらいに?」

「あ、ああ……そう…なの。」

まさか、自分の親が経営してる、ホテルとは言えない。


「分かった。」

「何が?」

「協力してやるよ。」

「きょ、協力って?」

梨々香は、少し嫌な予感がした。

「部屋取ってやるよ。俺、こう見えても、ここの社員だから。」

「社員!?」

目を丸くする梨々香。


まさか、まさか!


「あれ、よく見なかった?俺の名刺。」

「名刺!?」

梨々香は慌てて、カバンの中から、瞬の名刺を取り出す。

そこには間違いなく、

Forest pine company と書いてある。
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