恋人は社長令嬢
「お金や仕事なんて、私にとっては、何でもない事なんです!」

那々香は顔を上げて、二人を見た。

「亮介さんだけが……私の生きる糧なんです。」

それを聞いて、亮介の妻は、自分から外に出て行った。

「有子!」


亮介も一緒に外へ出た。

後に残されたのは、那々香一人だけだった。

そんな那々香の背中に、そっと触れた人がいた。

「大丈夫か?那々香。」

瞬だ。

「うん。」

那々香は体を起こした。


「あ~あ、みっともねえ!」

「おい、至。」

至も那々香の側にやってきた。

「何で那々香が、あいつの為に、土下座するんだよ。」

「至!!」

「うるさいな!元はと言えば、あいつが勝手に、離婚話を持ち出しただけじゃねえか!」

至は、興奮しながら叫んだ。

「那々香は、何も悪くねえよ……」

至は、手を差し出すと、那々香を立ち上がらせた。
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