アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
吹雪の静かな問い詰めに、周は言葉を失い、吹雪から視線を逸らした。
その行動を見て、吹雪は彼を信じたいという最後の気持ちが消えてしまった。
やはり、彼には後ろめたいことがあるのだ。
吹雪にはそう感じられる態度に見えてしまった。
「話しを聞いて、吹雪さん。僕は、あなたの事を………」
「周くん、学生なんでしょ?」
「………どうしてそれを………」
吹雪の力ない声で告げられた言葉に、周は驚きで目を大きくして言葉を失っていた。
「もう周くんの役には立てないから、ごめんね」
「吹雪さんっ!お願いだ、俺の話しを………」
「離してっ!…………もうこれ以上傷つきたくない………」
吹雪は我慢していた涙が最後の言葉により溢れ出てしまった。冷静にはなれず、大きな声をあげて、彼の手を振り払うと吹雪は逃げるように部屋に入り、ドアの鍵をしめた。
その後すぐに、ドンドンッとドアを叩く音が、静かな部屋に響いた。
「俺、吹雪さんが話してくれるまでずっとここで待ってるから!………お願い、俺の話しを聞いて欲しいんだ………」
周の懇願する周の声が聞こえる。
けれど、吹雪は玄関にずるずると座り込み、そのまま声を殺して泣いた。
言い訳なんて聞きたくもない。
もう誰も信じたくない。
吹雪はそれでも彼の気配を微かに感じる玄関から離れる事は出来なかった。