メーティスの出会い

「お茶菓子もきちんと用意して。冷蔵庫の中にケーキがあったはず」

玲奈が大声で言い、「わかった、わかった！」と透はお茶を入れながら言った。

お茶とケーキを透が持って行くと、玲奈は真剣な表情で村田刑事の話を聞いていた。透も椅子に座って話を聞く。

「先生は××市は知ってる？」

「馬鹿にするな。この県の南にある港街。昔は日本一の漁師街だったが、今では高齢化が進んでいる」

「そうそう。そこで今、問題になってることがあってさ〜……」

村田刑事によると、その街に住む多くの人がここ最近アニサキス症に苦しめられているらしい。透は目を見開き、玲奈は「へえ……」と面白い話を聞いているかのように呟く。

アニサキス症とは、アニサキスという寄生虫の幼虫がいる魚介類を食べた数時間後に幼虫が主に消化管の壁に食い付くことによって急な腹痛などを起こす感染症だ。

「市場に売られている魚を食べた多くの人がアニサキス症で病院に運ばれたんだ。しかも、一度だけじゃない。これは何かあると思ってな」