恋に負けるとき




そう思った瞬間。




肩に衝撃。



ん?



ガシっ。




たくましい腕に



引き寄せられていた。




え?



肩組まれてねえ?





「お前、あの子の彼氏?」



耳元でザラザラした早田先輩の声。



「いや。あの



…俺の片思いっす」



「は、マジ? 



ふーん。」




早田先輩は、品定めするみたいに




俺をジロジロ見る。




「おまえ、度胸あんじゃん。




泣かすなよ?」




そう言って笑って



パッと肩を外した。



「今日はいいからよ。



また今度おごらせてよ」




早田先輩が、田所さんに言う。



「いや、ほんとにそんな



気にしないでください」




田所さんが顔の前で手を振る。




「このままだと、こっちが気持ち悪いんだよ。




お礼ぐらいさせろ」




「今度な」




「…はい。



お願いします」





観念したように、田所さんが答えた。




早田先輩が去っていく。


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