恋に負けるとき


グタグタと頭の中で



考えるばかりで



眠れない夜は続いて。




田所さんは普通にも見えるし




なんか、避けているようにも…




どうしたらいいのか。




身動きできなくて




話しかけることにさえ戸惑う。




あーもう




なんだこれ?




苦しすぎ。



…もう、フテ寝してやる!




休み時間の教室。





隣の席で女の子たちのはしゃぐ声。




ひと眠りするつもりのおれの耳に聞こえてくる。




暗い視界の中で




田所さんの声を待ってしまう




しょうこりもないおれ。




「えー、じゃあ、この中ならだれがタイプ?



断然ライくんでしょ」




「私はレオくん」




「んー私もライくんかな」




アイドルの話か。




「ねえ。田所ちゃんは?」




当然、おれの耳がダンボになる。




「えー…



私わかんないなあ」



「えー、いないの?



あえて言うなら?」



「うーん。この人かな」



「セオくんかあ。



さわやかイケメンタイプだね」



セオくん?



どんなの?



さわやかイケメンなの?



見たいけど!




さすがに、聞き耳たててましたとは



俺でも言いづらい。




田所さんの小さい声が聞こえる。



「わたしよくわからなくて、



そういうの」




「田所ちゃんって、付き合ったことなし?」




田所さんがうなずいたのかな。



「もしかして、好きなひともいたことないの?」




「え?一回も?」




矢継ぎ早の女子たち。



「うん…



わたしほんと、そういうのうとくて」



ちょっと気後れしたような



田所さんのこえ。




「でも、いいなとか、



かっこいいな。




とか思ったことは、あるでしょ?」




「ときめいたこととか、



さすがにあるでしょ?」




「んーと、



そうだね。



でも、



みんなみたいな感じと



一緒なのかな。




付き合うとか




わたしには早いっていうか、




できる気がしなくて」





「男ギライってこと?




いや、そんなことないよね。




普通に話すよね。



ニコニコ」




「なんていうか。




なんだろね




自分でもわかんないけど。」




ちょっと元気なく笑って、田所さんが言う。




「男がちょっと怖いとか?」




「あれじゃない?



田所ちゃんは癒し系だから




相手も癒し系が合いそうだよね。」



「佐治くんとか?」



「あーわかるー」



「佐治くん、一途そうだし。田所ちゃんと合いそう」



なんだよ。



佐治って隣のクラスの?




大人しくて、いつも成績トップのやつ?



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