続・闇色のシンデレラ
2時間後。

陣痛の間隔が10分を切るようになった。



「ううぅ……」



あまりの痛みに声が漏れる。

さすがのわたしも病院に電話をかけることにした。

志勇が心配そうな顔をするのでやり取りを聞いてもらおうとスピーカーにすることに。



「あの、陣痛が10分を切るようになって…」

『ああ、そうなんですね。でもあなた、初産ですよね?』

「はい……」

『初産の場合陣痛が10分切ったところでそこからすぐ生まれるとは限らないんですよ。
もしかしたらその痛みが前駆陣痛という可能性もありますし。
それに今来られると深夜料金もかかりますし、1日の入院費に加算されますよ?
診療時間内に来られてはいかがですか?』



電話に出た助産師の声はトゲトゲしく高圧的な中年女性の声だった。

話もろくに聞いていないのにそう言われ、初産で不安なのはわかり切ってるだろうし、そんな言い方はないでしょと言葉を失っていると志勇が携帯を手に取った。



「夫の荒瀬志勇だ。別の助産師に代われ」

『はい?あのね、初産で心配なのは分かりますけども……』

「話も聞かない助産師に話しても意味が無い。他に代われと言ってんだ」

『……はあ、そうですか。少々お待ちください』



志勇が電話越しに声を低くして言うと、嫌味たらしく受話器から離れた。



『すみません、この荒瀬っていう方クレーマーですか?』



が、保留音を押していなかったらしく向こうの声が丸聞こえ。思わず耳を疑った。

ところがだ。



『は!?荒瀬さん!!?なんで早く代わらないの!!!』



少し遠くの方で慌てふためいた別の女の人の声がしたかと思うと「どいて!」と声が響いた。



『申し訳ありません荒瀬様!どのようなご状況か詳しくお聞かせ願いますか?』



わたしはこれで安心できると彼女に今の状況を伝え、すぐ病院に向かうことにした。
< 273 / 372 >

この作品をシェア

pagetop