続・闇色のシンデレラ
「……お兄ちゃんもそこまでしないと思うけど」



俺は割と真剣に言ったのに、琴音さんは困ったような顔で首をかしげる。

綺麗な長い髪が目の前で揺れて思わずドキッとした。



「え?だって網谷の組員はみんな言ってるじゃないですか。
『琴音さんに手を出したら若にタマとられる』って」

「ああ……あれ、お兄ちゃんのブラックジョークだよ。みんな騙されてるの」

「マジですか!?誰も冗談なんて思ってないみたいですけど!?」

「ぷっ……あはは」



ブラックジョーク?そんな馬鹿なあれはガチだろ。

そう思ったその時、琴音さんが俺の前で初めて心の底から笑ってくれた。

愛想笑いじゃない彼女の本当の笑顔は朗らかで優しくて、記憶の中の兄と重なった。

守りたい、そう思えるようなあったかくて柔らかい笑顔。

まあ、俺が守りたいだなんておこがましいけど。
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