エレベーター
極度の恐怖で意識を失ってしまいそうだ。


それでも意識を保てていたのは、一穂たちからの声が聞こえて来るからだった。


『美知佳、聞こえてるか!?』


充弘の声にあたしはゴクリと唾を飲み込む。


次の瞬間……目の前の扉が開いていたのだ。


いつの間に太陽が出たのだろう。


オレンジ色の光が箱の中にまで降り注ぎ、隅の闇を溶かして消して行った。


「美知佳!?」


そんな声が聞こえてきたかと思うと、扉の向こうから一穂の顔が見えた。


その顔を見た瞬間、あたしは意識を失っていたのだった。
< 64 / 221 >

この作品をシェア

pagetop