クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「今日はずっと手を繋いでくれるんですか?」
「繋いでるんじゃない。ふらふらしないように掴んでるだけだ」
「あの……だったらこうしてほしいです」

 自分勝手ながらも、初めてのデートで気が大きくなっていた。
 だから、ただ繋ぐだけだった手を恋人繋ぎに変える。

「だからデートじゃないって言ってるだろ」

 そう言いはしても、夏久さんは私の手を振りほどかなかった。
 くしゃ、と自分の髪を手でかき回し、顔をしかめる。
 普段は前髪を上げているのに、今日はオフだからか下ろしていた。
 そうすると幼く見えるのだなと思っていたけれど、こうして感情をあらわにしていると余計にそう見える。

 今、あの冷たい無表情はなかった。
 呆れ、苛立ち、困惑。そんな感情であっても、なにかしら心が動いているとわかる方が嬉しい。

「私、夏久さんが好きです。だからちゃんとデートに付き合ってください」
「絶対に嫌だ」

 今なら言えると思って言ったのに、速攻で拒否されてしまう。
 がっくりと肩を落としたくなったけれど、まだ手は繋がれたままだ。

(確かめたいの。……どこまで私を――嫌っているのか)
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