クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「俺が頼んだんだ。心配だったから」
「……ありがとうございます。この子のこと、そんなに大切に思ってくれて」
「どうしてそうなるんだ」

 語気を強められてびくっとする。
 怒っているのかと思ったけれど、顔を上げた夏久さんは苦い顔をしている。

「いつもそうだろ。俺は君の話をしているのに」

 不思議な気持ちになりながら身体を起こす。
 ひと月振りだと思えないくらい、普通に話ができていた。
 話すべきことがたくさんあったはずなのに、そのどれもが出てこない。

「夏久さんが……私を助けてくれたんですよね」
「そうだ」
「どうして……?」

 本当にわからなくて夏久さんを顔を見つめる。

「どうして私をあそこで待っていてくれたんですか……?」
「どうしてって……会いたかったからに決まってるだろ」
「……私に?」
「ほかに誰に会いたがるんだ」

 握られていた手から指がほどける。
 代わりに、夏久さんは私の背中へと腕を回した。
 優しく抱き締められて心臓が止まりそうになる。

「つらい思いをさせるなら、連絡も取らないし別居だってする。でも俺はいつだって君に側にいてほしかった」

 びく、と肩が跳ねた。
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