エリートパイロットの独占欲は新妻限定

「それも、あの真島さんなんでしょ? 羨ましいのを通り越して妬ましいくらい」


冗談とは思えない目だった。

病院にお見舞いに来たときに佐奈は智也と鉢合わせしたことが何度かあり、そのたびに本人に向かって素敵だと連呼。そういった猛アプローチに慣れていそうな智也でも、ちょっとタジタジになるくらいだった。


「だけど、どうしていきなり結婚なんて?」


誰だってそう思うだろう。佐奈も例外なく疑問に思ったようで、テーブルに身を乗りだした。

由宇は昨夜、自分の身に起きた顛末を順序立てて話していく。

こうして思い返してみても奇妙だと言う以外に言葉がない。群を抜いて素敵な智也が、どうして由宇のような平凡な女に結婚を申し込むのか。
彼の周りにはキャビンアテンダントやグランドホステスといった洗練された美女が、たくさんいそうなもの。智也が望めばいくらだって手に入るだろう。

それなのに、どうして自分なのか。

そう考えたときに真っ先に浮かぶのは〝責任感〟の三文字だ。慕っていた父、和幸の遺言めいたものを果たそうという義務とも言える。
そんなものに縛られてほしくはない。
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