エリートパイロットの独占欲は新妻限定

「もしも私がお断りしていたらどうしたんですか?」
「断らせるつもりはなかったから。絶対に由宇と結婚するって決めてた」


そのセリフだけを聞くと勘違いしそうになるが、そこに愛があったわけではない。あくまでも和幸に頼まれたからなのだから。

うっかり油断して心をときめかせるところだった。じつのところ、ちょっとドキッとしてしまったが。
でも指輪が素晴らしいのに間違いはない。


「とても綺麗ですね。ありがとうございます」


わざわざ注文してまで用意してくれたのだ。愛はなくても、優しさは紛れもなく由宇に対してのものだろうから。


「気に入ってもらえてよかった。はめてみない?」
「……いいですか?」
「もちろん。手、貸して」


まさか智也がつけてくれるとは思いもしなかった。おずおず左手を出すと智也がそっと取り、薬指にスーッと指輪を滑らせた。価値の高さのせいなのか、左手が妙に重く感じる。
< 34 / 160 >

この作品をシェア

pagetop