エリートパイロットの独占欲は新妻限定


熱いシャワーを浴びてすっきりし、リビングのソファに腰を下ろす。バッグを漁ってスマートフォンを取り出すと香澄からメッセージが届いていた。昨夜、連絡先を交換していたのだ。


【由宇ちゃん、おはよう。昨夜は飲ませ過ぎちゃったかな? ごめんね。今日は智也と一緒にミラノへのフライト。なにかあったら教えるね】


文章に余計な装飾がなく、最後に顔文字がひとつだけあるすっきりとしたメッセージだった。普段、由宇がやり取りしている友達とは違う大人の雰囲気がこんなところにも漂っている。


「智也さんと一緒のフライトなんだ……。いいな」


ひとり言が口から漏れた。
考えもせずに出た言葉に自分の気持ちを認識させられた気がする。

由宇は智也を好きなのだ。それはきっとプロポーズされるよりももっと前から。

和幸の入院する病室で会うごとに少しずつ想いを募らせてきた。自分でも気づかないうちに優しく頼もしい智也を好きになっていたのだろう。
だからこそ昨夜のように美しく大人の魅力に満ち溢れた彼の同僚たちを見て気後れしたり、羨んだりしたのだ。特に香澄に対しては全面降伏といってもいい。

自分が香澄のような女性だったら、もっと智也にふさわしく、隣を歩くのにも堂々としていられるだろうに。


「初夜、ちゃんと迎えたかったな」


大人っぽく見せたいがために飲み過ぎた自分を猛烈に後悔した。

< 78 / 160 >

この作品をシェア

pagetop