もう一度あなたに恋をする
急遽、立花さんとプロジェクトアシスタントを交代してから少しした頃からある噂がささやかれるようになった。

お弁当を持ちいつものミーティングブースへ移動しようと立ち上がった私はみのりさんに確保され『お弁当は今日はなし!外へ食べに行くよ!」と強制的に連れ出された。連れて来られたのは会社から少し離れた喫茶店。よくこんな所知ってたなって感じの。そこにはすでに夏樹さんとみどりさんが待っていた。

『朱音の耳に入ってる?』と聞かされたのはアシスタントにすぎない私が東京に呼ばれたのは社長の愛人だからとか社長だけじゃなく息子の久瀬さんにまで色目を使ってるとか。他の男性社員に対しても媚を売り他の人の仕事も奪うなど根も葉もない噂が社内中に広まっていると言う事だった。

椅子から落ちた日以来、久瀬さんはよく私の頭を撫でるようになった。確かに急遽プロジェクトアシスタントも交代した。そしてメインアシになった私は以前より久瀬さんとよく行動を共にするようになった。その事が女子社員の嫉妬心を煽り噂に拍車をかけたのだろう。

しかし私は噂話にはうとかった。と言うか社内の女性では、ほぼこの三人の先輩としか仕事以外の会話はしないので私の耳には入ってきていなかった。

「えっ、知らない。」

「うん、そうだと思った。」

「最初はかわいい嫉妬ってくらいだったんだけど最近ちょっと酷くなってるからさ。」

この三人は私の事を本当に心配してくれている。
この噂は立花さんがプロジェクトを外された上に私と久瀬さんの仲が良くなっていく事への腹いせに流し出したんだろうと言っている。実際最初の頃の噂は彼女が関わる話が主だったらしい。そこに久瀬さんを狙っている他の者が尾ひれをつけ広げていると。

「何も考えずにいろいろ言う人がいるけど噂に負けちゃだめよ。私たちが付いてるからね。」

ホントにありがたい先輩たちだ。

入社以来可愛がってもらった社長に私のせいで変な噂がたったことが事申し訳ない。久瀬さんもそう。せっかく仕事を認めてもらえたのに・・・。
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