もう一度あなたに恋をする
「よし、よくやった。」

いつもの様に久瀬さんが頭をポンポンと撫でてくれた。時間は二時五十分。急ぎ資料を持って大会議室に向かった。ドアを開け入るとメンバーが一斉にこちらを見た。みんなの視線に気づいた久瀬さんが『大丈夫』と言うように頷くと強ばっていたみんなの顔に笑みが戻った。



「久瀬君、トラブル?」

会議が終わり片づけをしていると江川さんが久瀬さんに声をかけて来た。相変わらず察しのいい人だ。早急にパソコンを元に戻さないと明日以降の仕事に支障が出てしまう。話を続ける二人に頭を下げ私は一人会議室を出た。

エレベーターは直ぐ来そうにはない。二階下のフロアまでなら階段の方が早そうだ、急ぎ階段に向かった。

そして・・・・

階段を降りかけた時、誰かに背中を押されたような気がする。


バランスを崩した私は階段を転げ落ちた。

痛みで動けず、ふと見上げた階段の上には誰かが私を見下ろしていた。

『助けて・・・』そう言いたいのに言葉が出ない。
私の意識もだんだんと遠のいていく。


私の傍まで降りて来たその誰かが『あなたが悪いのよ』そう言い下へ降りて行った。


今のは誰だったのか。
私の意識はそこで途切れた。
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