もう一度あなたに恋をする
相変わらず忙しい毎日を過ごしていたある日

「朱音!今日ヒマ?ヒマだよね。飲みに行こ!」

夏樹さんから突然の誘いである。

「松本、ヒマって決めつけんな。九条さんだって予定あるかもだろ。」

「デートする相手もいないしヒマでしょ?」

うっ、確かにデートする相手も地元じゃないから友達もいませんよ・・・。

「それは松本だろ?九条さんとならデートしたいってヤツわんさかいるぞ。」

「あのー、私そんな相手いないですしヒマですよ?」

「ほらー。朱音は私のなの。だから恋人なんていらないの。ねー。」

勝ち誇ったような顔を森谷さんに向ける夏樹さんが可愛らしい。
その後も私の事はそっちのけで二人はなんか言い合いしてるし・・・。
この二人がくっつけばいい感じでお似合いだと思うんだけどなー。



その日の夜いつものランチメンバーでの飲み会。
普段は人の悪口など言わない夏樹さんが荒れている。
これは相当ストレス溜まってるな、今日もベロベロかな。

「ホント使えない、あの子!全然内容理解できてないし急な変更にも間に合わないし、仕事なめてるでしょ!」

「どうどう、夏樹の気持ちも分かるけど。」

「久瀬さんも何で黙ってあの子を使ってんだか。ぜーったい朱音の方が優秀なのに!」

先輩に信頼されるって嬉しいな。でもこんなに夏樹さんが悪口を言うなんて初めて見た。プロジェクトは大丈夫なんだろうか・・・。

「まあ久瀬さんもしょうがなくでしょ。だって専務の姪っ子だし。入社だって縁故でしょ?」

「学生の時に久瀬さんに一目惚れしておじ様に頼み込んだとか聞きました。」

そうなの?なんでみんな知ってんの、そんな事まで。

「だからって大事な仕事にまで口出す?『アシには紗香を入れるように』って言ったらしいじゃん、あの専務。」

「副社長の座を狙ってる専務も焦ってるんでしょ?余りにも久瀬さんが立花さんのこと相手にしないから。久瀬さんのこと狙ってる子、社内の他にも取引先のもいるらしいしね。」

「久瀬さんが出席するパーティーに専務が立花さんを連れて行って傍にいるように仕掛けてるけど完全にスルーされてるって。まあ他にも自分の娘をって寄ってくる人もスルーしてるらしいけど。」

「あー、もう!久瀬さんも次期社長なんだからバシッと言ってやったらいいのに!」

そっか、やっぱり久瀬さんてモテるんだね。まあ自分の気持ちを伝える気無かったけど、やっぱり私には高嶺の花。せいぜい仕事で役に立つくらいしかできないか・・・。

ん?ちょっと待って!

「えっ、あのー。次期社長って?」

「久瀬さんに決まってるでしょ。社長の息子だし。」

「へっ?でも社長は東藤ですよ?」

「久瀬さんが小さい時に離婚してて久瀬は母親の苗字。てか社長直々に呼ばれたのに朱音知らなかったの?」

えーっ!余りの驚きで声も出ない。

「朱音?おーい。」


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