いちご

「ももが慶兄とねえ〜？」


「…なに…よ」



溜め息のようにも吐き出すようにも聞こえた龍雅の声と、再び慶兄の名前が出てきた事に、やけに心臓が反応してしまう。


「いや〜？気にしないで下さい」


「…うん、分かった」


「おい〜!!冷てえなあ〜!!」



どっちよ！？何て言ったら龍雅の思惑に引っかかりそうなので、あえてシカトしておいた。


「なあ…好きなのか」


「……へ？」



いつものふざけた龍雅の声音とは違い、突然の龍雅の真面目な声に思わず間抜けな返事をしてしまった。


「ももは好きなのか？」


「…え」



見上げると、腕を組んで何だか真面目な顔をしている龍雅に、一瞬思考が停止した。



なに…？急に………。



じっと見つめる龍雅から視線が外せず、言葉も出ない。黒目がちな魅惑的な瞳に、身動きが取れなかった。



やっぱり黙ってたら絶対モテるのに…勿体ないなあ……。


何ていつものように呑気に考えられなかった。


「ももの気持ちは、違う場所にあんじゃねえの？」



確信に触れるような口振りに、胸が締め付けられた。


「…意味分かんない」



とっさに出た言葉も、これでは何の効力もないと思ったが、他に上手い言葉も出てこなかった。


「慶兄に何て言われたか知らねーけど、ももは昔から自分の気持ちに嘘つきすぎ。我慢しすぎなんだって」


「ちがっ」

「ほらな〜。たまにはこないだみてぇに素直になれよ。」



否定しようとした言葉も、すぐに遮られてしまった。



そんなつもりないのに…。我慢なんかしてないよ。



「別に…嘘なんかついてないもん」