いちご

熱陽




思わず前のめりになった瞬間、額に激しい痛みと鈍い音が頭の中に響いた。


「いっ……たああぁぁあ!!」


「ぶっ…はははは」



思い切りクローゼットに頭をぶつけて、崩れるようにしゃがみ込んだ私を、慶兄が後ろで大爆笑している。


一気に目が覚めたように、体の熱も急激に下がるようで、逆に顔が熱くなる。


でも、それどころじゃない。

顔ではなくて額が熱いのだ。


「も、もも…だ、だいじょぶ、かっ…くっ」



慶兄は何とか笑いを堪えようとしているらしいが、全く堪えきれていない。


「そんな…笑わないでよぉ。まじ痛いんだから」



脳みそ絶対ぷるぷるしたよ!!て…てゆーか…たんこぶできてるぅ!!


押さえていた手で額を撫でてみると、不自然に額の中央が膨らんでいる。



「悪い、まさか頭突きっ………んんっ、殴れとは言ったけど」


「頭突き!?違う〜…」



あぁ…何か泣きそう……痛いし恥ずかしいし。



でも、反面ホッとしている自分も居る。



こんな浮ついた気持ちのまま、慶兄となんて絶対ダメだ。


慶兄を傷付けたくない……。



「どれ、見せてみろ?」


「いっ…いい!!てゆーか嫌っ!!」


しゃがみ込んで私に顔を近付ける慶兄とは反対に顔を向け、両手で押さえて首をブンブン横に振った。


そんな私の腕を慶兄に掴まれ、思わず尻餅をついてしまった。


「どうしたんだよ?ここは暗くて何も見えないけど」



ハッとして逸らしていた顔を思わず慶兄に向けてしまい、再び俯いた。


「ぼんやり分かる」


「強情だなあ、いいから見せろ」


「いやー!!」


たんこぶ何て…単語自体久しぶりに自分でも聞いたよ!!


どうしよう。このまま腫れたまんまになっちゃったら……。


「まったく……よっと」


「う、うわあぁ」
< 486 / 503 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop