幼馴染みの彼はずるい人
幼馴染みの彼はずるい人
私、片森雛乃(カタモリヒナノ)は幼馴染みである雪宮玲王(ユキミヤレオ)のことが好きだ。
 自分の想いに気づいたのは中学校の頃。
 いつも一緒にいたはずの玲王がキラキラ輝いているように見えて少し恥ずかしさを感じた。
 その日から玲王を意識するようになっていつの間にか距離を取って話さなくなった。
 学校から帰るのも一人になった。
 家付近で玲王が女の子を連れて歩いているのを見ると胸が苦しくなって来た道を戻り遠回りして家に帰った。
 保育園、小学校、中学校と一緒だったけれど高校受験をするとき、私は玲王に受験する学校を伝えなかった。
 私が玲王から距離を取っても親同士が仲がいいためよく一緒に夕ご飯を食べたりもした。
 そこで話題になるのが受験の事。
 私はその頃まだどこを受験するか迷っていた。
 できれば玲王とは違うところがいいと考えていた。
 「雛乃はさ、どこ受けんの。高校」
 「うーん、まだ考え中」
 「…ふーん」
 「玲王は決まったの?」
 「おう、雛乃には教えねえけどな。ついてきたら困るし」
 この瞬間、私は自分の想いを諦めることにした。
 「あ!でも、雛乃は決まったらぜってぇ教えろよ」
 「やだ、私も教えない」
 後から進路変更とかされても困る。
 そんな他愛無い会話をして玲王は自分の家に帰った。
 リビングに降りるとまだ母親達は話していた。
 「そういえば、ヒナちゃんは高校受験何処行くの?」
 「自分の実力にあったところがいいなって思ってます」
 「やっぱりそうよね~。玲王なんて自分の実力よりも一つ上のランク受けようとしてるのよね。まあ、お金はどうにかするけども」
 玲王の成績は確か上位だったはずだ。
 今聞いても学校名は教えてくれないだろう。
 私は軽く挨拶をしてまた2階の自室に戻った。
 とにかく地元から少しでも離れた学校。
 私は進路指導と担任に協力してもらい、両親とも相談しながら受ける学校を決めた。
 そうこうしているうちに受験日1週間前。
 自室で勉強しようと思っていた私は両親に呼ばれリビングのご飯を食べるテーブルの自分がいつも座っている椅子に座った。
 「雛乃。本当にここでいいのか?」
 私が決めた高校は最寄りの駅から2時間はかかる場所。
 「でも今更変えることできないし、私はここがいい」
 玲王への想いを忘れるため、少しでも離れるため。
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