極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 私が注文を取ったり料理を運んだりと動き回っていると、ふたりの女性客がメニューをみながらため息をついているのに気が付いた。

「最近なんだかだるいんだよね」
「わかる。私も食欲があんまりなくて」

 浮かない表情のふたりに、小さめのカップがのったお盆を持って近づく。

「いらっしゃいませ。これ、もしよかったらどうぞ」
「なんですかこれ」
「クローブとオリゴ糖で漬けたレモンを浮かべた、レモンスパイスティーです。整腸作用があるんです」
「へぇ」

 私が説明をすると興味深そうにカップを手に取る。
 暖かい紅茶をひと口のみ、ほうっと息を吐きだした。

「お腹の内側があったかくなる感じがする!」
「冬が近づくと日照時間が短くなるので、気分がふさぐのは自然なことなんですよね。そういうときに体や心の栄養になるものを意識的に取ってあげると楽になるみたいですよ」
「へぇ、製薬会社で働いているのに普段健康に気を使った食事なんてしてなかったから、勉強になります」
「メニューの中でおすすめってありますか?」
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