極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「すでにアメリカでの承認は取得していて、これからは世界各国で販売できるように進めています」

 無事にアメリカで販売が開始されれば、年間何千億という売り上げが見込まれる。
 それが世界各国に広がれば広がるほど、売上はのびていくだろう。

 でもそれ以上に、がんで苦しんでいるたくさんの患者さんを救う希望になるはずだ。

 力強く言った俺に、父は表情を変えずにうなずいた。

「新薬の発表をしてからというもの株価は上がったし、ほかの売り上げも好調だ。お前が帰国してから大胆に職場環境を改善したおかげで、社員たちの意欲も増しているようだし……」

 父から手放しで褒められるなんてはじめてだ。
 
 驚いて俺が眉をあげると、父は少し落ち着かない様子で天井や窓の方に視線を向ける。
 そしてゆっくりとこちらを見て口を開いた。

「成長したな、結貴」

 その言葉に、胸になにかが押し寄せてきた。

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