極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「文香はわが孫ながら、なかなか頑固であぶなっかしい子です。人に頼るのが苦手で、無理をしすぎるところがある」

 その言葉に俺はうなずいた。

 たしかに文香は悩みや苦労を人に打ち明けず、ひとりで抱え込もうとする。

「だから、あなたのような頼れる人が、文香と未来のそばにいてくれると私も安心できるんですが……」
「あの?」

 首を傾げると、彼は一度受け取ったボトルをこちらに差し出した。

「文香は土曜にまた見舞いに来る予定なんです。もしよかったら、これはあなたから直接返してくれませんか?」

 そう言われ、不思議に思いながらもボトルを受け取る。

 どうしてそんなお願いをするのかわからなかったけれど、日曜日にまた文香に会える。
 そう思と、胸がふわりと暖かくなった。

 挨拶をして病室を出る。
 廊下の壁にもたれていたアランが肩を上げてこちらを見た。

「悪い、待たせた」
「堅物なボスが五年間も想い続けた女性に再会できたんだから、少しくらい待ちますよ」

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