極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「結貴の母親を紹介されて、姑が怖くなったのかもよ?」
「それはないと思うけど。紹介したときふたりはすごく楽しそうだったし、母も彼女が気に入った様子だったし……」
 
 母は『文香さんのような素敵な女の子が娘になるなんてうれしいわ』と喜んでいた。
 
 父と母は恋愛結婚だったが、身分の違いを理由に祖父母や親族から反対され苦労したそうだから、母が同じ境遇の文香をいびるとは思えない。
 
 それに、少し体調不良気味だともらした彼女を心配して、母は病院を紹介し親身になっていたし……。
 
 俺が苦い顔で黙り込んでいると、ルームミラー越しに挑戦的な視線を向けられた。

「で、結貴はどうするの? 諦めておとなしく引っ込むのか?」
「まさか。このくらいで諦めるわけないだろ。彼女の心を動かせるようにとことん口説くよ」

 俺の答えを聞いて、アランは満足そうに緑がかった瞳を細めた。

「そうこなくっちゃ。じゃあさっそく調査会社を使って、彼女の住所と電話番号と職場と人間関係を調べあげようか」
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