極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「もしよかったら、お茶でも飲んでいく?」
「いいのか?」
「うん。お食事のお礼に。言っておくけど、すごく狭い部屋だから驚かないでね」
 
 前置きをして部屋に招き入れてくれた。
 
 
 古いけれどきちんと整理され掃除が行き届いた部屋。
 
 キッチンには調理器具やカラフルな食器が収納されていて、窓際には観葉植物やプランターに入ったハーブが緑の葉を伸ばしていた。
 
 未来ちゃんが転んでも痛くないようにという配慮か、床に敷かれた厚みのあるラグ。
 そして小さめの座卓と座布団。
 ほかにはテレビと収納棚、絵本が並んだ本棚くらいしかない。
 
 けれど壁や棚の上には未来ちゃんが描いた絵が並べられていて、さみしい印象はない。
 
 生活感があってやすらげる、明るく温かな部屋だった。
 
 室内を見回し、あることを不思議に思う。
 
 いくつか写真が飾られているけれど、映っているのはほとんど未来ちゃんだ。
 数枚は文香が写っているものもあるけれど、父親の写真は一枚もない。
 
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