With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
「お父さんがもう帰ろうって、言ってるのに、私はイヤだ、まだ見てるって駄々こねて、結局最後まで見てた。そしたら、練習が終わって、その選手が引き上げる時に声を掛けてくれたんだ。女子高生はいたけど、私みたいな小さい子は、珍しかったからだと思うんだけど、『お嬢ちゃん、野球好きなの?』って。嬉しかったけど、恥ずかしくて、私は『うん』って一言答えるのが、精一杯だったんで、『そうか、君みたいな小さい子が野球が好きなのは嬉しいな。これからも応援よろしくね。』って頭を撫でてくれた。」


「それがミッチャンの初恋物語だもんね。」


この話を、もう何度も聞かされている久保くんにそう付け加えられて、私は顔を赤らめながら、続ける。


「それで帰り道、お父さんに言ったんだ。私、野球やりたい、あのお兄さんと一緒に野球やりたいって。」


「そっか。」


「そしたらお父さんに『みどりが高校生になる頃には、あのお兄さんはとっくに卒業しちゃってるし、それにお前は女の子だから、選手になるのは、ちょっと難しいかな。』って言われて。エ~、女の子は野球出来ないの?って聞いたら、『出来ないわけじゃないけど、男の子と一緒にやるのは難しいなぁ。』って。私ガッカリしたんだけど、その後、『女の子なら、マネ-ジャ-っていう仕事があって、それなら選手と一緒に出来るぞ。』って教えてくれたの。」


「それから、マネ-ジャ-が木本さんの夢になったんだ?」


「うん、それもこの高校でやることがね。」


松本くんの言葉に、私は大きく頷きながら、そう答えた。
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