With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
新年度が始まり、私たちは3年生になった。いよいよ高校生活、最後の1年。そして最後の夏がやって来る。


哲はエ-スで4番、そしてキャプテン、文字通りのチ-ムの大黒柱。そして唯一の3年生のマネ-ジャ-である私は、チ-フとして、選手を支える。目標は夏の県大会を勝ち抜いて、私たち3年生にとっては、出場機会コンプリ-トとなる5季連続の甲子園出場。更にはその甲子園大会での全国制覇。


「忘れ物を取りに行く。その為には、絶対に県大会で負けるわけにはいかない。」


夏の県大会のシード校決めに直結する春の県大会で、我が校は優勝を果たし、夏の大会には堂々と第一シードとして臨むことになった。でも


「春は勝てたけど、それが夏の勝利の保証になんかならないってことは、恵美だってよくわかってるだろう。まして今年の1年生は、いいピッチャ-が多いと聞いている。春よりチ-ム力をアップして来る学校も当然多いはずだ。だから俺たちも、自分の、自分たちの力をとにかく高める為に、練習するしかない。」


哲は表情を引き締めて言う。その顔を少し眺めていた私は


「哲は・・・頼もしくなったね。」


と思わず口にしていた。


「そっか・・・なんか恵美にそんなこと言われると、照れるな。」


そう言った哲に顔は本当に照れ臭そう。


「だって、本当のことだもん。」


「お前のお陰だよ。」


「えっ?」


「お前がいてくれなかったら、俺は今頃、道を踏み外して、もうここに居なかったかもしれない。」


「哲・・・。」


「俺、恵美をマネ-ジャ-に誘って、本当によかったと思ってるよ。」


「ちょっと・・・なに急に言い出してるのよ。止めてくれる。」


今度は私の方が照れ臭くなって来る。


「とにかく、もう泣いても笑っても、県大会まで3ヵ月。夏の甲子園までを考えても、もう俺たちの高校野球は4ヶ月しかない。」


「そうだね・・・。」


「とにかく悔いのないように・・・恵美、最後までよろしく頼むな。」


「こちらこそ。」


なんでこんな真面目な話になったのか、よくわからないけど、私たちは笑顔を交わし合う。


「不思議だね?あんな雰囲気なのに、付き合ってないんでしょ、あの2人?」


「本当だよね・・・。」


そんな私たちを遠目に見ながら、2年生の後輩マネ-ジャ-2人が話していたことには、当然気付いていなかった。
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