With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
でも、その後は、佐藤博は特に私に嫌がらせのようなことをして来るでもなく、普通に練習に参加していた。


大宮康浩の方は、この前見せてくれた俊足を飛ばして、広範囲に飛んで来るフライを、難なくキャッチして見せる。


仲間として、うまくやっていけるかは、今のところ、かなり自信がないけど、プレイヤ-としては、相当頼もしそうな存在であることは、間違いない・・・かな?


このあと、守備練習の途中で、私は監督のアシスタントを交代してもらって、水の補給やボールの交換等の他の業務に取り掛かる。バタバタといつものように、駆け回っているうちに、陽が段々、西に傾いて来る。


号令が掛かって、後片付けに入る。選手達に交じって、私も散らばったボ-ルを拾ったりしていると


「お疲れさん。」


と言いながら、グラウンドに現れたのは、顧問の山上先生。私達が一斉に挨拶を返すのに、手を挙げて応えた先生は


「今日で部活入部締め切りだな。結局今年の新入部員は6名か。」


とキャプテンに聞く。


「はい、最後の日に2名入ってくれて、ホッとしました。」


ちなみに、先生の担当科目は日本史で、私達1年生のカリキュラムからは外れているので、直接教わることはない。3年の学年主任を務めていて、キャプテンのクラスの担任でもある。


「そうだな。まぁ、遅れて入って来る奴がいるかもしれんが、とりあえずは今年の夏はこのメンバ-で戦うということだな。俺は野球のプレ-は教えられんが、高校生活や部活の中で、何かあったら、遠慮なく言って来てくれ。1年生はもちろん、上級生も同じだ。よろしくな。」


「はい。」


「片付けの途中で済まなかった。続けてくれ。」


部員からは「ゴ-さん」と呼ばれて慕われている、温厚なベテラン教師である山上先生の言葉に、私は頼もしさを感じていた。


私達が、そんな先生に一礼して、片付けを再開させるのを見届けて、ゴーさんは監督に近付いた。


「ピッチャ-の白鳥、ファ-スト久保、サ-ド松本、大宮と佐藤が外野、それにマネ-ジャ-の木本。もう少し入って来るかと思ったけどな。」


「うん・・・俺の調べた限りでも、他に野球経験者はいなそうなんだよな。まぁ仕方がない、こればかりは。」


たまたま年齢が同じ2人は、もう10年近く監督-顧問としてコンビを組んでいる。


「でもあの6人は面白いぞ。」


「面白い?」


「なかなか個性的な連中が集まった。白鳥にばかり、注目が集まっているが、今日入って来た2人ももちろん松本と久保もいい選手だ。それにマネ-ジャ-の木本の存在は、これからのウチの部にいい化学反応を起こしてくれるはずだ。」


「化学反応・・・。」


「今年こそ打倒御崎高。俺は夢じゃないと思ってる。」


先生が息を呑む中、監督はそう言い切っていた。
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