With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
この試合は、私にとって、2つの思わぬ良きことをもたらしてくれた。


1つは佐藤くんと仲直りというか、和解出来たこと。


試合の翌日、私がいつものように、練習の準備の為に早めに登校すると、朝は苦手と公言して憚らない佐藤くんが、待ち構えていて


「木本、今まで本当にすまなかった!」


と言うと、いきなり深々と頭を下げられた。あまりの突然の出来事に、私がポカンとしていると


「俺、お前のこと、ずっと誤解してた。というかハッキリ言って、女子マネに偏見持ってた。でもお前は本当に野球が好きで、野球部が大好きで、俺達と一緒に頑張ってくれてるんだって、ようやくわかった。今までの俺の態度は、本当に恥ずかしい。ただただ頭を下げる、この通りだ。」


と言って、またまた頭を下げて来る。


「今更なんだよって、思うだろうけど、俺は木本と仲間として、一緒にやって行きたい。だから、今までの俺の態度は、水に流して欲しい。虫のいい話だけど、頼むよ。」


いったいどうしちゃったの?っていうくらいの態度の急変に、戸惑うしかなかったけど、でもここまで言ってもらって、私が意地を張る必要なんか、全くないよね。


「佐藤くんがそう言ってくれるなら、私の方こそ是非よろしくお願いします。」


そう答えた私に、パッと表情を明るくした佐藤くんは


「そっか、よかった。ありがとう、ありがとう。」


と言うと、なんとハグして来た。


「ちょ、ちょっと佐藤くん、止めてよ。」


驚いて、私は拒むけど、佐藤くんは委細構わず、私は結局、しっかり抱き寄せられてしまう。


男子にハグされるなんて、初めてだし、それが佐藤くんだなんて、想像もしてなかったし、まして今は2人きり。どうしようかと困惑していると


「木本、改めてよろしくな。」


という言葉と共に解放された。さすがに恥ずかしくて、私は彼の顔を見られなかったけど


「さ、準備に入ろうぜ。」


佐藤くんは何事もなかったかのように、そう言って歩き出す。


そうこうしているうちに、他の部員も登校して来て、今まで見向きもしなかった私の手伝いを積極的にしている佐藤くんの姿に、みんな目を丸くする。


ハグされたことは言えなかったけど、今朝の経緯をみんなに話すと


「アイツはよく言えばまっすぐ、悪く言えば単細胞。でも俺と違って、裏表はない奴だよ。」


と大宮くんは笑う。


自分の非を認めて、潔く頭を下げてくれた佐藤くんのさっぱりとした態度に、私も好感は覚えた。だけど、もうハグは勘弁してね。
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