With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
翌朝、いつものように久保くんと一緒に教室に入ると


「おはよう。」


と美怜が声を掛けてくれる。


「あ、美怜。おはよう。」


私が笑顔で挨拶を返すと


「じゃ。」


と久保くんは自分の席に向かって行く。


「毎日仲良く一緒に登下校してるのに、付き合ってないなんて、信じられないな。」


久保くんの後ろ姿を見ながら、美怜が言って来る。


「本当に久保くんとは、仲のいい友達なんだよ。」


私が答えると


「なるほどねぇ。男女間に友情は成立するのか、古くからの論争のタネだけどね。」


美怜はなんとなく釈然としてないようだ。


「でも久保くんといると、本当に安心するというか気が置けないというか。」


「ドキドキはしないの?」


「ドキドキはしないな。」


「フーン。」


そんなことを話していると、松本くんが入って来た。


「あっ松本くん、おはよう。」


私が声を掛けると


「おはよう、木本さん。」


笑顔で答えてくれた松本くんは、そのまま席に着く。


「ちなみに、彼はどうなの?」


「えっ?」


「松本くんにもドキドキしないの?」


彼の姿を目で追いながら、美怜は聞いて来る。


「うん、しない。」


「白鳥くんにもしないんだよね?」


「うん。」


「みどりって、どんな人がタイプなの?」


「えっ?」


突然、そんなことを聞かれて驚いていると


「ま、いいや。その辺は追い追い、ね。」


意味深な笑みを浮かべると、美怜も自分の席に戻って行く。


やがて授業が始まる。先日のテストが返却され、みんなが一喜一憂している。


そして、私が呼ばれ、テストを先生のところに取りに行く。


「木本、お前がこのクラスでは点数トップ。」


先生がそう言いながら、答案用紙を返してくれた。


「みどり、やるぅ。」


美怜の声が聞こえて、私は恥ずかしくなってしまう。


席に戻ると


「えっ97点?あと1問だったじゃない。」


「惜しかったね、でも凄いじゃん。」


なんて周りの女子が声を掛けてくれるようになったのは、美怜のお陰。彼女には感謝しないと。


そんなことを思いながら、フッと左斜め前に視線を向けると、松本くんが答案用紙を見ながら、大きくため息をついていた。
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